回想録 須甲幹也(昭和27年卒)

 私は何の当てもなく農学部に入学し、将来の目標もなく害虫学教室に学んだ変わり種の一人かもしれません。
 したがって専門的な勉強は殆どしておりません。但し山崎、楢橋両先生を中心に研究を続ける教室の雰囲気が好きでした。
 私なりに興味を持ったのは生物の消化(食物の)作用です。限定された条件のもとに複雑な化学変化を経て生体に必要な物質とエネルギーを作り出すメカニズム、おそらく各種の酵素その他の触媒による作用によるものと考えられるが、結局解明できない部分が多すぎて「生命力」という言葉に帰してしまいました。
 実社会に出て界面活性剤を主体とした化学会社で40年余り働きましたが、その中で記憶に残る主な仕事と言えば、一つは親会社の三共製薬が脂肪分解酵素の研究をしていたので、これを洗濯用洗剤に入れたら面白いのではないかと提案し成功したことで、現在市販されている家庭用の洗濯洗剤のほとんどすべての銘柄には各種の酵素が入っていますが、これはこの流行の嚆矢となったものです。またもう一つは、樹脂モノマーの原料に酸化エチレンを付加する場合に、支障を起こすパーオキサイドの副成を防止する反応条件を考えたことなどです。
 退社後は「小人閑居して不善をなす」のたぐいで毎日元気で遊んでおります。80歳になった今、町会の区長と環境衛生副委員長を引き受け、特に塵芥の問題で頭を悩ませておりますが、あの膨大な塵芥から原油でもできないものかと夢だけは見ております。
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