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どのようにしてキイロショウジョウバエはエサを見つけるのか ~採餌行動の全貌~ 修士2年 吉水敏城

2018/11/27 0:08 に Toshiki Yoshimizu が投稿   [ 2018/11/27 0:09 に更新しました ]
 動物は生き延び次世代を残すために、エサを食べ栄養とエネルギーを蓄える必要がある。動物がエサを探し、見つけ、獲得し、食べるという一連の行動は採餌行動 (foraging behavior) と呼ばれ、多くの動物で研究されている[1]。今回のセミナーでは、遺伝的操作が簡便で、行動が観察しやすいキイロショウジョウバエにおける採餌行動の研究を例に挙げ紹介する。

 採餌行動はまず、エサを見つけその場所にたどり着くことから始まる。Fryeら[2]とSaxenaら[3]それぞれの研究グループでは、キイロショウジョウバエが自由飛行下でどのように匂いへ向かうかを3次元トラッキングで明らかにした。その結果、背景が垂直方向の縞模様であり、匂い付近に目印がある場合、その匂いに最もたどり着きやすいことが分かった。つまり、匂いがあることはもちろんのこと、背景と目印もエサを見つけるのには重要な役割を果たしていたのである。続いて、エサ付近に降り立ったキイロショウジョウバエはエサまで辿り着かなければならない。Álvarez-Salvadoらは、風洞内でエサの匂いの有無でエサまでの行動がどう変化するか行動実験を行った[4]。エサの匂いがある場合は風上に向かって歩くが、匂いがなくなった途端、歩く速度遅くし風向に応じて歩く方向を変更していることが明らかになった。匂いと風向という別々の情報をうまく統合し行動に出力しているといえる。最後に、エサに辿り着いた後、どのような行動をするのだろうか。Corrales-Carvajalらはキイロショウジョウバエの栄養状態がエサを見つけた後の行動にどのように影響するのかを、食べさせたアミノ酸の量を変動させることで確認した。その結果、アミノ酸量が多くなるほど、他のエサに行く頻度が高くなり、逆にアミノ酸量が少ないと他のエサに行こうとするが元のエサに戻りそのエサを食べ続けるということが分かった。また、エサの探索と摂取は時々刻々と変化する内部の栄養状態とともにダイナミックに変動することも明らかになった[5]。Kimらは、一度エサを見つけたキイロショウジョウバエがどのようにしてもう一度エサにたどり着くのかをトラッキング行い行動を解析することで明らかにした。[6]。その結果、嗅覚と視覚を使わなくても元のエサに戻ってくることを発見した。これは、アリなどと同じように、自分がこれまでたどってきた経路を積算し、それに基づいて元の場所に戻る行動だと筆者たちは結論付けている。さらに、エサを探す行動はドーパミン作動性神経が関与し、ドーパミン受容体がエサを探す行動を制御することも明らかになっている[7]。

 以上のようにキイロショウジョウバエの採餌行動は、エサを見つけ、辿り着き、別のエサを探すまでの一連のプロセスが研究、解明されている。しかし、このプロセスが解明されているのは一個体においてであり、他個体がいる複合的な環境での採餌行動を適切に反映しているとは言い難い。他個体とのエサの奪い合いや、他個体がいることでエサが食べられるなどを想定した実験系が今後必要であると考えられ、そうすることで、採餌行動の生態学的な意義がより明確になってくるだろう。

[Reference]

[1]       P. M. Itskov and C. Ribeiro, “The dilemmas of the gourmet fly: the molecular and neuronal mechanisms of feeding and nutrient decision making in Drosophila.,” Front. Neurosci., vol. 7, p. 12, 2013.

[2]       M. A. Frye, M. Tarsitano, and M. H. Dickinson, “Odor localization requires visual feedback during free flight in Drosophila melanogaster.,” J. Exp. Biol., vol. 206, no. Pt 5, pp. 843–55, Mar. 2003.

[3]       N. Saxena, D. Natesan, and S. P. Sane, “Odor source localization in complex visual environments by fruit flies.,” J. Exp. Biol., vol. 221, no. Pt 2, p. jeb172023, Jan. 2018.

[4]       E. Álvarez-Salvado, A. M. Licata, E. G. Connor, M. K. McHugh, B. M. King, N. Stavropoulos, J. D. Victor, J. P. Crimaldi, and K. I. Nagel, “Elementary sensory-motor transformations underlying olfactory navigation in walking fruit-flies.,” Elife, vol. 7, Aug. 2018.

[5]       V. M. Corrales-Carvajal, A. A. Faisal, and C. Ribeiro, “Internal states drive nutrient homeostasis by modulating exploration-exploitation trade-off,” Elife, vol. 5, Oct. 2016.

[6]       I. S. Kim and M. H. Dickinson, “Idiothetic Path Integration in the Fruit Fly Drosophila melanogaster,” Curr. Biol., vol. 27, no. 15, p. 2227–2238.e3, Aug. 2017.

[7]       D. Landayan, D. S. Feldman, and F. W. Wolf, “Satiation state-dependent dopaminergic control of foraging in Drosophila,” Sci. Rep., vol. 8, no. 1, p. 5777, Dec. 2018.

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