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交尾前性選択と交尾後性選択は相関関係にあるのか?

2017/05/29 22:10 に Kazuyoshi Minekawa が投稿   [ 2019/05/02 21:55 に更新しました ]

動物が繁殖するには交尾機会を得ること(mating success)だけではなく、受精に成功すること(fertilization success)も重要である。それに応じて、繁殖に関わる性選択はmating successを巡る競争による交尾前性選択、fertilization successを巡る競争による交尾後性選択の2つに大別することができる。これまで交尾前性選択と交尾後性選択はそれぞれの枠組みの中で研究されてきたが、ここ数年2つの性選択間の関係について議論が白熱してきている[]。今回はそれらに関する研究を紹介する。

それぞれの性選択ごとに考えると、交尾前と交尾後に関する形質はどちらも繁殖に有利になるように発達すると考えられる。しかし、オスが形質に投資できる資源は限られているため、交尾前と交尾後の形質はtrade-off、つまり負の相関関係にあるという考えがある。例えばグッピーにおいて、オスの体表の色彩装飾は性的魅力度としてmating success[]、精子の速さと生存率はfertilization successに影響することが知られている[]Evansはオスの性的魅力度に関する形質と精子競争の優位性に関する形質にtrade-offの関係があると主張した[]

それに対して交尾前と交尾後の形質はどちらもオスの遺伝的な質を反映しており、メスが片方の形質を選ぶ時、必然的にもう片方の形質も選んでいることになる、つまり2つの形質は正の相関関係にあるという意見もある。例えばフサエリショウノガンにおいて、オスの求愛行動と精子の質は健康状態を示すものとしてそれぞれが繁殖成功に影響することが知られている[]Chargéらは求愛行動と精子の形質に正の相関があると主張した[]

そんな中、最近の研究でこれまでの議論をひっくり返す意見が現れた。2016年、Traversらはキイロショウジョウバエの単一メス由来系統間の比較により、mating successfertilization successに関する形質が相関関係にないことを明らかにした[]。つまり、2つの性選択は独立して機能しているという、議論をふりだしに戻すかのような主張をしたのである。

細かく見れば、グッピーの研究ではごく一部の形質にしか負の相関が見られず、ほとんどの形質では交尾前と交尾後で相関が見られなかった。また、フサエリショウノガンの研究では求愛頻度以外の重要な交尾前形質、例えばエリの大きさなどについては全く言及していない。穿った見方をすれば、これらの研究は恣意的に相関のある形質を選んでいるようにも捉えられる。もしそうであるならば、Traversらのように実際には交尾前と交尾後性選択の間に相関関係はなく、2つは独立して機能していると考えるのが適切ではないだろうか。

References

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[3] Rhonda R. Snook (2005) Sperm in competition: not playing by the numbers. Trends Ecol. Evol. 20: 46-53

[4] Jonathan P. Evans (2010) Quantitative genetic evidence that males trade attractive-ness for ejaculate quality in guppies. Proc. R. Soc. B 277: 3195-3201

[5] Rémi Chargé, Michel Saint Jalme, Frédéric Lacroix, Adeline Cabet & Gabriele Sorci (2010) Male health status, signaled by courtship display, reveals ejaculate quality and hatching success in a lekking speicies. J. Anim. Ecol. 79: 843-850

[6] Rémi Chargé, Céline Teplitsky, Yves Hingrat, Michel Saint Jalme, Frédéric Lacroix, & Gabriele Sorci (2013) Quantitative genetics of sexual display, ejaculate quality and size in a lekking speicies. J. Anim. Ecol. 82: 399-407

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