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キイロショウジョウバエにおけるメスの交尾受容に関わる神経回路の発見 修士課程1年 等百合佳

2015/12/08 1:28 に Yurika Hitoshi が投稿   [ 2015/12/08 1:32 に更新しました ]

動物の求愛の際、メスが交尾の受容を判断する神経回路は長らく謎に包まれていた。メスは交尾の際、オスからの求愛という外部の情報と自身の状態という内部の情報を統合して判断し、交尾を受容する行動を起こさなくてはならない。

キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)では、求愛、交尾行動の研究が多くおこなわれてきた。キイロショウジョウバエのメスは他の多くのメスと同様に、オスの求愛と自身の性的な成熟度の両方を評価し交尾をすると判断した場合に交尾行動をとる。

オスの求愛には聴覚情報である翅の振動(求愛歌)、嗅覚情報である性フェロモン(cis-vaccenyl acetatecVA)など)、触覚情報である腹部の振動などさまざまな要素が含まれ(1)、これらの求愛を総合してメスは交尾を受容するか判断する。

しかし、いくら求愛を受けても交尾直後のメスは交尾を受容しない。これはオスからメスに受け渡されるSex Peptide(SP)によるものであり(2)、メスの子宮にはSPを受容する神経が存在する。

メスは交尾を拒否するか受容するかによってオスに対して取る行動が変化する。交尾を拒否する際はオスを蹴る、飛び去る、産卵管を突き出すなどの行動を取り(3)、交尾を受容する際はポージング(一時停止)をしたり膣板を開いたりという行動を取る。

これらの情報は、統合して判断する神経回路が存在するはずである。その詳細は今まで全く分かっていなかったが、近年その神経回路に関わると考えられる3種類の神経が解き明かされた。


Zhouらはオスの求愛情報を受容する神経pCdpC1を発見した(4)pCd神経はcVApC1神経はcVAと求愛歌の両方にカルシウム応答を示した。これらの神経はにおいを受容する他の神経が存在する部位とも接続があり(5)、求愛情報を統合する神経回路の一部であることが示唆される。

FengらはSP受容神経から情報を受け取り脳へ伝達するSAG神経を発見した(6)SAG神経はSP受容神経とシナプス接続をしており、SPをオスから受け取ることで急速にそのはたらきが抑制される。

Bussellらはメスが交尾を受容する際の行動を制御するAbd-B神経を発見した(7)。交尾の際のメスの行動の詳細な解析により、Abd-B神経がポージングを制御していることを突き止めた。


これらの神経は3種類とも腹髄や前大脳などの中枢神経系へ伸びており交尾受容に関わる神経回路の一部であることが示唆される。今まで長らく謎に包まれてきた交尾に際する意思決定の神経回路を解き明かす上で非常に大きな一歩であり、今後の研究が期待される。


References

1.       Dickson BJ (2008) Wired for Sex: The Neurobiology of Drosophila Mating Decisions. Science 322(5903):904-909.

2.         Chapman T, et al. (2003) The sex peptide of Drosophila melanogaster: Female post-mating responses analyzed by using RNA interference. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 100(17):9923-9928.

3.         Connolly K & Cook R (1973) REJECTION RESPONSES BY FEMALE DROSOPHILA-MELANOGASTER - THEIR ONTOGENY, CAUSALITY AND EFFECTS UPON BEHAVIOR OF COURTING MALE. Behaviour 44(1-2):142-166.

4.         Zhou C, Pan YF, Robinett CC, Meissner GW, & Baker BS (2014) Central Brain Neurons Expressing doublesex Regulate Female Receptivity in Drosophila. Neuron 83(1):149-163.

5.         Sakurai A, Koganezawa M, Yasunaga K-i, Emoto K, & Yamamoto D (2013) Select interneuron clusters determine female sexual receptivity in Drosophila. Nature Communications 4.

6.         Feng K, Palfreyman MT, Hasemeyer M, Talsma A, & Dickson BJ (2014) Ascending SAG Neurons Control Sexual Receptivity of Drosophila Females. Neuron 83(1):135-148.

7.         Bussell JJ, Yapici N, Zhang SX, Dickson BJ, & Vosshall LB (2014) Abdominal-B Neurons Control Drosophila Virgin Female Receptivity. Current Biology 24(14):1584-1595.

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