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ニセアメリカタバコガHeliothis virescens成虫の摂食が性フェロモン生産に与える影響 修士課程1年 稲葉寛

2016/07/04 2:05 に ユーザー不明 が投稿   [ 2016/07/04 2:07 に更新しました ]

 鱗翅目昆虫において、成虫ステージの摂食は植物の花の蜜や樹液など吸汁に限られる。複数種の鱗翅目昆虫において、成虫ステージでのスクロース摂食によって、産卵数、寿命が上昇したという報告がある[1]成虫の摂食は適応度を上げるために重要である一方、性フェロモン生産に与える影響についての知見は少ない。本ゼミでは、ニセアメリカタバコガ成虫の摂食が、性フェロモン生産に及ぼす影響をについて取り上げる。

スクロースを摂取した未交尾、既交尾メスは水のみを摂取した場合に比べ、血リンパトレハロース濃度(HTC : Hemolymph Trehalose Concentration)の増加を示した。しかし、性フェロモン量は既交尾メスでのみ増加した。トレハロース濃度とフェロモン生産の関連性を明らかにするため、既交尾メスのフェロモン腺を、異なる濃度のトレハロース溶液で培養したところ、濃度が上昇するにつれて性フェロモン量が増加し、既交尾メスの性フェロモン量はHTCに依存していることが明らかになった。また、スクロースを摂取した未交尾メスに幼若ホルモンを注射すると、既交尾メスと同じようにフェロモン量の増加を引き起こした[2]。多くの鱗翅目において、未交尾から既交尾への生理的転換は幼若ホルモンが関与しており[3]、未交尾から既交尾への転換の際、HTCは急激に減少する。JHを注入により減少したHTCはスクロース摂取によって上昇したため、性フェロモン量が増加したと考えられる。[2]

また、未交尾メスにおいても、数日間水のみを摂取した後に、スクロースを与えたところ、性フェロモン量、HTCは上昇した。これは、水のみを与えた糖ストレスにより、HTCが減少し、既交尾メスと同じ現象が起こったと考えられる[4]

 安定同位体標識グルコースを用いたMIDAMass isotopomer distribution analysis)法[5]により、成虫ステージで得た炭化水素:AACAdult-acquired Carbohydrate)配分を分析した。限られたAACにおいて、既交尾メスは、卵形成へのAAC配分を増加させ、性フェロモンへの配分を減少させた。一方、未交尾メスは、性フェロモン生産へAAC配分を増加させた。これは、既交尾メスでは、卵成熟のためAAC要求量が大きいのに対し、未交尾メスはAAC要求量が小さいためであると考えられる。[6]また、未交尾メスでは最大65パーセントがAAC由来の性フェロモンであり、成虫ステージでの摂食が性フェロモン生産に及ぼす影響は大きいことが分かる。

このように、交尾前と交尾後によって、生殖生理へのAAC配分を変化させることにより、適応度を最大にしている。

Reference

[1] Felix L. Wackers, Jorg Romeis, and Paul van Rijn (2007) Nectar and pollen feeding by insect herbivores and implications for multitrophic interactions. The annual review of entomology 52, 301-323

[2] Johanne Delisle and Michel Cusson (1999) Juvenile hormone biosynthesis, oocyte growth and vitellogenin accumulation in Choristoneura fumiferana and C.rosaceana: a comparative study. Journal of Insect Physiology 45, 515-523

[3]Stephen Foster (2009) Sugar feeding via trehalose haemolymph concentration affects sex pheromone production in mated Heliothis virescens  moths. The Journal of Experimental Biology 212, 2789-2784

[4] Stephen Foster (2010) Feeding and hemolymph trehalose concentration influence sex pheromone production in virgin Heliothis virescens moths. Journal of Insect Physiology  56, 1617-1623

[5] Stephan Foster, and Karin Anderson (2010) The use of mass isotopomer distribution analysis to quantify synthetic rate of sex pheromone in the moth Heliothis virescens. Journal of Chemical Ecology 37,1208-1210

[6] Stephan Foster, Karin Anderson, and J.P.Harmon (2014) Increased allocation of adult-acquired carbohydrate to egg production results in its decreased allocation to sex pheromone production in mated females of the moths Hleiothis virescens. The journal of Experimental Biology 217,499-506

[7] Stephan Foster and Karin Anderson (2015) Sex pheromone in mate assessment: analysis of nutrient cost of sex pheromone production by females of the moth Heliothis virescens. The journal of Experimental Biology 218, 1252-1258

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