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ショウジョウバエにおける再交尾抑制とその影響

2017/11/07 23:25 に Kazuyoshi Minekawa が投稿   [ 2019/05/02 21:54 に更新しました ]

 メスが複数のオスと交尾をする種において、オスがメスの再交尾を抑制する形質が進化してきた例がいくつかある[]。先に交尾をしたオスにとってメスが他のオスと交尾をすることは自分の子孫を産んでもらう機会を失うことになるからだ。キイロショウジョウバエのオスは射精する時、精子に加えて精巣由来タンパクをメスの子宮内に注入する。精巣由来タンパクの一つであるSex peptide (SP)という物質は生理学的な作用でメスの交尾受容性を低下させ、再交尾を抑制する[]。その結果、SPを注入するオス(1st male)、SPを注入されたメス、SPを注入されたメスと交尾をしようとするオス(2nd male)の3者で繁殖における利害の対立が生じることになる[]。今回のセミナーではショウジョウバエのSPによる再交尾抑制に注目し、この機能が行動生態学において行動や形態を進化させるキーファクターとなる可能性を論じる。

1st maleは再交尾抑制をすることによって利益を得るプレイヤーである。多くのショウジョウバエでは2nd maleが精子競争に有利となる形質をもっており、メスと2nd maleが交尾をすることで1st maleは父性が減少する危機にさらされることになる。しかし、メスの再交尾を抑制することによって精子競争が起きること自体を遅らせ、1st maleは父性を守ることができる[]。一方、メスと2nd male1st maleの再交尾抑制によって不利益を被る。再交尾抑制によってメスの交尾受容性は低下し、2nd maleは求愛にかける労力を増やさなければならない[]。また、メスは交尾受容性の低下によって再交尾時に晒されるオスからの求愛時間が長くなり、適応度が低下することが知られている[]。さらに最近の研究でSPの存在によって3者間の利害対立が引き起こされていることを裏付ける結果が見つかった[]SmithらはSPに対する反応の有無で3者における利害がどう変化するか実験を行った。その結果、SPに反応するメスにおいてはこれまでの研究結果と同様の利害対立が生じたのに対して、SPに反応しないメスにおいては3者間での繁殖における利害対立は生じてないことが実験的に証明された。

これまでの研究によってSPの再交尾抑制は3者間の利害対立を生み、性選択圧を強める要因の一つであることが示唆された。またショウジョウバエにおいてSPによる再交尾抑制の度合いは種によって違いがあることが体系的な研究によって分かっており[]、種によって再交尾における選択圧に違いが生じている可能性がある。つまり、再交尾抑制の強い種ではSPの存在が再交尾をする形質(顕著な性的二形や特徴的な求愛行動)の進化を助長するトリガーとなっているのかもしれない。


References 

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