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ショウジョウバエの闘争性とテリトリーの関係 修士1年 吉水敏城

2017/11/15 21:42 に Toshiki Yoshimizu が投稿
動物が同じ種の他の個体から餌、配偶者、産卵場所、子などを守るために、他の侵入を許さないように占有する空間をテリトリーterritory(縄張り)と呼ぶ。テリトリーの境界では、占有者と侵入者との間で、テリトリーをめぐって闘争行動が生じることが知られている[1]。ショウジョウバエのオスでは餌の上で他のオスを追い出し、メスがやってくるのを待つことが知られており、この行動はテリトリーディフェンス(territory defense)であると考えられてきた[2]。今回は、ショウジョウバエの闘争性とテリトリーにかかわる研究例と、その問題点について考える。
 Hoffmannらは、キイロショウジョウバエDrosophila melanogasterオス6匹を用い、激しい闘争行動であるlungingをして他のオスを追い出し、餌の上にオスが1匹とどまるということを指標にしてテリトリーの実験を行った[3][4][5]。その結果、日齢、オスの密度、餌場の広さ、系統に応じて、他のオスを追い出し、餌の上にとどまりやすさが変化した。また、Alisonらは、キイロショウジョウバエ近縁種のDrosophila serrataオス2匹を用いて、Hoffmannらと同じ指標のもと実験を行った[6]。その結果、体サイズが大きいほど、lungingによって他のオスを追い出し、餌の上にとどまりやすいことが分かった。
 以上の研究は、いずれもテリトリーが形成され、その形成は様々な条件で変化するとの結論がなされているが、その結論には疑問が残る。なぜなら、テリトリーはある空間をある程度の時間占有した結果、形成されるものだと私は考え、闘争行動の結果、餌の上にオスが1匹しかいない状況を指標にするというのは、その後どれくらい占有していたか、オス同士でその餌の上の入れ替わりがあるのか、また餌のどの位置にいたのかなどを考慮しておらず、テリトリーと呼ぶには不十分だと考えるからだ。また、撮影時間も最長で8時間と短い。したがって、上記の研究は、餌の上におけるショウジョウバエの闘争性を見ている、もしくは、に闘争性が高いオスに追い出された結果、寄りつかなくなっただけと考えることもできる。
 こうした研究に対して、トラッキング技術を用いて位置情報を取得し、餌の大きさに応じてテリトリーがどのように形成するかを調べた研究がある[7]。この研究では、餌場周辺にオス個体がより長くいることが位置情報の取得によって分かっている。この研究のように、テリトリー形成を見る場合には、位置情報を取得し、どれくらいの時間とどまっていたかを調べる必要があると考える。技術が進歩し個体を識別してトラッキングが容易にできるようになってきたので、闘争行動だけでなく、個体ごとの位置の長時間変化を調べ、他個体を排除しようとしている行動や、餌をどれくらい占有していたか、どの場所に長くいたかなどを調べることがテリトリー形成の研究の発展につながるのではないかと考える。

Reference

[1]       M. Hinsch and J. Komdeur, “What do territory owners defend against?,” Proc. R. Soc. B Biol. Sci., vol. 284, no. 1849, p. 20162356, Feb. 2017.

[2]       A. A. Hoffmann, “A laboratory study of male territoriality in the sibling species Drosophila melanogaster and D. simulans,” Anim. Behav., vol. 35, no. 3, pp. 807–818, Jun. 1987.

[3]       A. A. Hoffmann and Z. Cacoyianni, “Territoriality in Drosophila melanogaster as a conditional strategy,” Anim. Behav., vol. 40, no. 3, pp. 526–537, Sep. 1990.

[4]       A. A. Hoffmann, “The influence of age and experience with conspecifics on territorial behavior inDrosophila melanogaster,” J. Insect Behav., vol. 3, no. 1, pp. 1–12, Jan. 1990.

[5]       A. A. Hoffmann, “Heritable variation for territorial success in two Drosophila melanogaster populations,” Anim. Behav., vol. 36, no. 4, pp. 1180–1189, Aug. 1988.

[6]       A. J. White and H. D. Rundle, “Territory defense as a condition-dependent component of male reproductive success in Drosophila serrata,” Evolution (N. Y)., vol. 69, no. 2, pp. 407–418, Feb. 2015.

[7]       R. S. Lim, E. Eyjólfsdóttir, E. Shin, P. Perona, and D. J. Anderson, “How Food Controls Aggression in Drosophila,” PLoS One, vol. 9, no. 8, p. e105626, Aug. 2014.

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