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トラッキングによる動物の行動解析とその可能性 修士1年 吉水敏城

2017/07/03 23:26 に Toshiki Yoshimizu が投稿
 動物の行動を画像解析により定量化し、生物学的な意義を見出す研究は数多くおこなわれている。中でもトラッキングは、おのおのの個体の位置や向きを時系列に沿って定量化し、動いた軌跡を得る基本的な行動解析手法である[1]。本ゼミナールでは、生物学的な行動をトラッキング解析によって定量化した最近の研究事例を紹介し、得られたデータからどのようなことが分かるかに焦点を当てつつ、その可能性を考えたい。
 先ず、特定の物質への誘引・忌避行動解析にトラッキングを適用した研究は多い。たとえば、キイロショウジョウバエの各種の匂いに対する行動応答を解析した例では、匂いへの応答として出力される行動パターンが有限個しか存在しないことが示されている[2]。また、別の研究では、どの位置でどれくらいの時間滞在したかという時系列データを解析することによって、キイロショウジョウバエが紫外線を忌避したり[3]、産卵場所としてスクロースを含む培地を避けることを見出した[4]。そして、トコジラミを用いた研究例では、移動の向きや速度に注目することで熱への誘引応答をこの種では初めて定量化することに成功している[5]。
 続いて多いのが、採餌における探索行動をトラッキングした研究である。キイロショウジョウバエの例では、貧栄養状態では餌場にとどまり、栄養状態が良ければ探索行動に移行するという栄養状態と行動との関係を、位置と速度変化の時系列を解析することで明らかにできた[6]。また、条件付け学習の効果をトラッキングにより評価しようという試みでは、学習により探索行動の経路が変化し、効率よく餌まで向かうことを明らかにできた[7]。
 最後に、睡眠パターンの解析にもトラッキングが使えることが示されている[8]。
 以上のように、トラッキングによる行動の定量化によって、肉眼による観察では困難であった移動速度や経歴といった時系列要素を含めた行動解析が可能になり、それによって生物学的に興味深い発見がなされてきている。トラッキング解析は、技術的には新しいものではないが、その特徴を生かす用い方をすれば、生物学的に興味深い発見につながる可能性を秘めているはずである。

Reference
[1] A. I. Dell, J. A. Bender, K. Branson, I. D. Couzin, G. G. de Polavieja, L. P. J. J. Noldus, A. Pérez-Escudero, P. Perona, A. D. Straw, M. Wikelski, and U. Brose, “Automated image-based tracking and its application in ecology,” Trends Ecol. Evol., vol. 29, no. 7, pp. 417–428, Jul. 2014.
[2] S. H. Jung, C. Hueston, and V. Bhandawat, “Odor-identity dependent motor programs underlie behavioral responses to odors,” Elife, vol. 4, no. OCTOBER2015, pp. 1–31, 2015.
[3] A. R. Guntur, B. Gou, P. Gu, R. He, U. Stern, Y. Xiang, and C.-H. Yang, “H2O2-Sensitive Isoforms of Drosophila melanogaster TRPA1 Act in Bitter-Sensing Gustatory Neurons to Promote Avoidance of UV During Egg-Laying,” Genetics, vol. 205, no. 2, 2017.
[4] C.-H. Yang, R. He, and U. Stern, “Behavioral and Circuit Basis of Sucrose Rejection by Drosophila Females in a Simple Decision-Making Task,” J. Neurosci., vol. 35, no. 4, 2015.
[5] Z. C. DeVries, R. Mick, and C. Schal, “Feel the heat: activation, orientation and feeding responses of bed bugs to targets at different temperatures.,” J. Exp. Biol., vol. 219, no. Pt 23, pp. 3773–3780, Dec. 2016.
[6] V. M. Corrales-Carvajal, A. A. Faisal, and C. Ribeiro, “Internal states drive nutrient homeostasis by modulating exploration-exploitation trade-off,” Elife, vol. 5, Oct. 2016.
[7] R. Navawongse, D. Choudhury, M. Raczkowska, J. C. Stewart, T. Lim, M. Rahman, A. G. G. Toh, Z. Wang, and A. Claridge-Chang, “Drosophila learn efficient paths to a food source,” Neurobiol. Learn. Mem., vol. 131, pp. 176–181, May 2016.
[8] D. S. Garbe, W. L. Bollinger, A. Vigderman, P. Masek, J. Gertowski, A. Sehgal, and A. C. Keene, “Context-specific comparison of sleep acquisition systems in Drosophila,” Biol. Open, vol. 4, no. 11, pp. 1558–1568, Nov. 2015.
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