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植食性昆虫におけるpreferenceとperformanceの不一致 修士課程1年 中川りき

2016/01/18 19:54 に ユーザー不明 が投稿

ガ類など,植食性昆虫のメスは交尾後,幼虫の餌となる寄主植物を探索し,産卵しなくてはならない。母親の寄主選好性(preferance)と幼虫のperformanceは一致しているという仮説(PPH)を支持する例は多く報告されている(1)。マエキアワフキでは,ヤナギを寄主とする4種でpreferenceperformanceの相関が報告されている(2)。

しかし,全ての昆虫においてpreferenceperformanceが一致しているとは限らない。例えばモンシロチョウでは,幼虫が致死となるグンバイナズナへの産卵が報告されている(3)。

アワノメイガはトウモロコシの重大害虫であるが,間作物としてサトウキビを植えるとトウモロコシの収率が上がることが知られている。トウモロコシとサトウキビの葉の表面から溶出された化合物をGC-EAD分析すると,21の化合物で応答がみられ,それらは2種の植物で共有されている化合物であった。またそれらの化合物のうち,ノナナール以外のすべての化合物は実際に卵を持ったメスを誘引した。よって母親はトウモロコシと同様にサトウキビにも選好性を示した。しかしアワノメイガの1令幼虫はサトウキビの葉の表面から溶出された化合物を忌避し,サトウキビにおいて幼虫の生存率は下がることが報告されている。この場合,寄主と似たサトウキビの匂いが母親の産卵行動に干渉したと考えられる(4)。

メスの寄主選好性(preferance)と,幼虫のperformanceとは,植食性昆虫の多様性を生み出す主要因と考えられている。ヨーロッパアワノメイガ(主要な寄主;トウモロコシ)とアズキノメイガ(野生での主要な寄主;ヨモギ)はともに多食性の農業害虫である。これらの昆虫の母親は,それぞれの主要な寄主植物に対して,次善の寄主植物よりも強い選好性を示したが,ヨーロッパアワノメイガ幼虫の生存率はトウモロコシとヨモギの間で変わらなかった。つまり寄主の特化は,母親の好みのみによって保たれている(5)。

モンシロチョウの一種(Pieris oleracea)においては,マスタード(Alliaria petiolata,)が外来植物である地域では,母親はマスタードに産卵するものの,幼虫のperformanceは極めて悪い。その一方,マスタードが根付いている地域では,母親は本来の寄主植物以上にマスタードに好んで産卵し,幼虫は成長することができた。後者の地域では,Pieris oleraceaのマスタードへの適応が進んでいると考えられる6

また,Chromatomyia nigraにおいては,メスの寄主選択は幼虫のperformanceだけでなく,成虫自身の利益にも影響されるという説が示されている(7)。

このように,preferenceperformanceの不一致には様々な場合と原因が考えられる。

 reference

(1)Gripenberg, S., Mayhew, P. J., Parnell, M., & Roslin, T. (2010). A metaanalysis of preference–performance relationships in phytophagous insects.Ecology letters, 13(3), 383-393.

(2)Craig, T. P., & Ohgushi, T. (2002). Preference and performance are correlated in the spittlebug Aphrophora pectoralis on four species of willow. Ecological Entomology, 27(5), 529-540.

(3)Chew, F. S. (1977). Coevolution of pierid butterflies and their cruciferous foodplants. II. The distribution of eggs on potential foodplants. Evolution, 568-579.

(4) Jiang, Xing-Chuan, et al. "Electrophysiological and oviposition responses of Asian corn borer, Ostrinia furnacalis (Lepidoptera: Crambidae), to compounds rinsed from the surfaces of sugarcane and maize leaves." European Journal of Entomology 112.2 (2015): 295.

(5) Orsucci, M., et al. "Host specialization involving attraction, avoidance and performance, in two phytophagous moth species." Journal of Evolutionary Biology (2015).

(6)Keeler, M. S., & Chew, F. S. (2008). Escaping an evolutionary trap: preference and performance of a native insect on an exotic invasive host. Oecologia,156(3), 559-568.

(7)Scheirs, J., De Bruyn, L., & Verhagen, R. (2000). Optimization of adult performance determines host choice in a grass miner. Proceedings of the Royal Society of London B: Biological Sciences, 267(1457), 2065-2069.

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