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植食性幼虫の食害により植物が放出する揮発性有機化合物と幼虫の集合性 修士課程1年 中川りき

2016/01/18 19:51 に ユーザー不明 が投稿

植食性昆虫に食害された植物は,その昆虫の天敵を誘引する揮発性有機化合物(herbivore-induced VOCs)を放出することが知られている。普通メスガは,同種内競合や天敵を避けるためこういった化合物を忌避する。その一方,幼虫は,herbivore-induced VOCsに誘引され得ることが明らかになってきた。例えば,ツマジロクサヨトウの6令幼虫は,y-tubeバイオアッセイにおいて,無食害のトウモロコシ苗よりも食害されたトウモロコシ苗をより好むことが報告されている(1)。

このような矛盾した行動はなぜ起こるのか。Spodoptera littoralisの幼虫は,トウモロコシのherbivore-induced VOCsに誘引されるが,herbivore-induced VOCsへの曝露は,早期の発育段階にある幼虫の成長率を下げることが分かった。一方,より年を取った幼虫では成長率に影響はなかった。幼虫は地面に落ちてしまった場合,すぐに寄主植物を探し出す必要があり,幼虫の寄主探索のためのherbivore-induced VOCsの利用と,同種内競争や天敵の問題とは,トレードオフの関係にある可能性がある(2)。

集合的摂餌は,植食性昆虫に普遍的にみられる特徴であり,天敵に捕食されるリスクを下げる,成長率を上げるなどの有益な側面(benefit)と,同種内競争といった不利益な側面(cost)の両方がある(3)。若い幼虫と成長した幼虫との間で,摂餌の方法や天敵からの発見されやすさに違いがある場合は特に,集合の年齢構成がこのcost-benefitバランスに影響を与える。野外実験によると,メイガの一種であるUresiphita reversalisの若い幼虫は,より年を取った幼虫が同所的に存在するとより高い生存率・成長率を示すが,同世代の幼虫が同所的に存在してもそのようにはならないことがわかった(4)。また,タテハチョウ科のChlosyne poecileは,若い幼虫は巨大な集合体を形成するが,より年を取った幼虫は小さい集合体,または単独で生活する。1令幼虫では,集合体サイズが大きいほど幼虫の摂餌率が上昇するが,2令以降では逆に下降することが分かった(5)。ツトガ科のSalbia lotanalisにおいても,1令幼虫は集合体を形成するが3令までに単独生活に移行することが報告されている(6)。さらに,イラガ科のdoratifera castaでは,より大きい集合に属する幼虫ほど,1令から3令幼虫に関しては早く成長し,4令幼虫に関しては生存率が上がることが分かった(7)。

集合的摂餌を行う幼虫が,集合にherbivore-induced VOCsを利用している可能性などについては,さらなる研究が必要である。

 reference

1Carroll, M. J., Schmelz, E. A., Meagher, R. L., & Teal, P. E. (2006). Attraction of Spodoptera frugiperda larvae to volatiles from herbivore-damaged maize seedlings. Journal of chemical ecology32(9), 1911-1924.

2von Mérey, G. E., Veyrat, N., D'Alessandro, M., & Turlings, T. C. (2013). Herbivore-induced maize leaf volatiles affect attraction and feeding behavior of Spodoptera littoralis caterpillars. Frontiers in plant science4.

3Fiorentino, V. L., Murphy, S. M., Stoepler, T. M., & Lill, J. T. (2014). Facilitative Effects of Group Feeding on Performance of the Saddleback Caterpillar (Lepidoptera: Limacodidae). Environmental entomology43(1), 131-138.

4Campbell, S. A., & Stastny, M. (2015). Benefits of gregarious feeding by aposematic caterpillars depend on group age structure. Oecologia177(3), 715-721.

5Inouye, B. D., & Johnson, D. M. (2005). Larval aggregation affects feeding rate in Chlosyne poecile (Lepidoptera: Nymphalidae). Florida Entomologist88(3), 247-252.

6Castillo, A., Johnson, M. T., & Badenes-Pérez, F. R. (2014). Biology, Behavior, and Larval Morphology of Salbia lotanalis (Lepidoptera: Crambidae), a Potential Biological Control Agent of Miconia calvescens (Myrtales: Melastomataceae) from Costa Rica. Annals of the Entomological Society of America107(6), 1094-1101.

7Reader, T., & Hochuli, D. F. (2003). Understanding gregariousness in a larval Lepidopteran: the roles of host plant, predation, and microclimate. Ecological Entomology28(6), 729-737.

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