ショウジョウバエの求愛行動

    動物が自らの子孫を残すためには、異性に好まれることが重要です。クジャクのように派手な装飾を見せびらかすものや、カエルやコオロギのように鳴き声で雌を呼び寄せるもの、蛾類のように雌が出すフェロモンの匂いを嗅ぎつけて雄がやってくるものなど、そのアピール方法は実に多様です。

    ショウジョウバエの求愛行動においても、雌雄の間で様々な手段によるコミュニケーションが行われます。まず雄は他の個体を視界に捉えると、前脚で相手の体に触れ、体表にあるフェロモンの成分から相手が誰であるかを見分けます。相手が同種の雌であれば、求愛を開始します。ショウジョウバエのアピール方法は、雄が翅をふるわせて奏でる「求愛歌」です。初めはすばやく逃げまわる雌も、求愛歌を聞いて徐々におとなしくなります。すると雄は、雌の交尾器を舐めて相手を確認し、腹部を曲げて交尾を行います。もし求愛歌が気に入らないと、雌は逃げ続けるので雄は交尾をすることができません。

    多くのショウジョウバエでは、求愛歌の善し悪しが雌に好まれるかどうかを決めていると考えられていますが、いくつかの種は他のアピール方法も獲得してきました。たとえば翅に目立った白黒模様がある種では、クジャクと同じように翅を大きく広げて雌の目の前をうろうろするような行動も観察されています。

    私たちが研究しているテナガショウジョウバエ(Drosophila prolongataは、他のどの種にも見られない驚きの求愛行動を進化させています。最初は他のショウジョウバエと同じようにメスの後ろや横から求愛歌を奏でているのですが、突然、雌の正面に回って腹部を激しく叩くのです。これはテナガショウジョウバエの雄特有の長くて太い前脚を効果的に用いたものである(ほかのショウジョウバエはやろうと思ってもできない)ことは確かですが、いったいどのような過程を経て進化してきたのでしょうか?(形態が先か、行動が先か?それが問題だ)。テナガショウジョウバエの求愛行動には様々な種内変異があり、異なる系統を駆使して研究を進めています。いろいろな面白いことが分かってきたのですが、それについては別の記事で。



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