トピックス


Journal of Ethology 2018 Editor's choice

2019/01/30 18:08 に Takashi Matsuo が投稿

Journal of Ethology誌の2018年第1号に載った論文が、2018 Editor's choice paperに選ばれ、Open Access権を付与していただけることになりました。2014年の瀬戸口さんの論文に続いて2回目であり、2018年の表紙にも採用してもらっていて、大変光栄に思っています。

この学会誌の「仮説検証型の方法論に限定せず、新たな発見の礎となる観察記載型の論文も採用する」という方針はとても貴重なもので、「それ自体はセンセーショナルでなくとも、次の研究を支えることのできるしっかりした研究には存在意義がある」と考える私にとっては共鳴するものがあります。実際、そのような論文は何度も引用することになり、後に続く研究の成立に重要な役割を果たしています。

再交尾時における求愛行動の意義に関する論文が公開

2018/05/14 22:05 に Takashi Matsuo が投稿   [ 2018/05/15 0:32 に更新しました ]

嶺川君が筆頭著者の論文がAnimal Behaviour誌に公開されました。

The adaptive role of a species-specific courtship behaviour in coping with remating suppression of mated females
Kazuyoshi Minekawa, Takahisa Miyatake, Yukio Ishikawa, Takashi Matsuo
(6月22日までこちらからOpen Access)

昆虫のメスは、1連の産卵に先んじて複数のオスと交尾することが良くあります。この場合、メスの体内では異なるオスに由来する精子の間で子の父性をめぐる争いが生じることになります(精子競争)。

キイロショウジョウバエでは、後から交尾したオスの精子が先に交尾したオスの精子を押し出してしまうこと(精子置換)、これに対抗して先に交尾したオスは精巣由来ペプチドの働きでメスの交尾受容性を下げてしまうこと(再交尾抑制)が知られています。つまり、後から交尾するオスは精子競争で有利であるにもかかわらずその力を再交尾抑制によって封じられていることになります。

このような状況下では、先手オスの再交尾抑制を打破するようないかなる手段の進化も後手オスにとって有利に働くと考えられます。

この論文では、テナガショウジョウバエにおいても
1.あとから交尾したオスの方が精子競争において有利であること
2.交尾直後のメスの受容性は低くなり、再交尾しにくいこと
を確認しました。その上で、
3.脚の先端を切ってLeg vibrationをできなくしたオスは既交尾メスと再交尾できなくなることを示しました。

これは、テナガショウジョウバエに固有の求愛行動であるLeg vibrationは、全てのオスにとって同等の意義があるのではなく、先に交尾するオスよりもあとから交尾するオスにとってより有用であることを意味しています。だとすると、新しい求愛行動であるLeg vibration(交尾前のオスメス間の相互作用)の進化が、それとは一見関係のなさそうな精子競争(交尾後のオス間の争い)の存在によって促進された、ということになるのかもしれません。


テナガショウジョウバエで遺伝子導入を実現した論文が公開

2018/05/14 19:10 に Takashi Matsuo が投稿   [ 2018/05/14 19:57 に更新しました ]

工藤さんが筆頭著者の論文がGenes & Genetic Systems誌に掲載されました。

piggyBac- and phiC31 integrase-mediated transgenesis in Drosophila prolongata
Ayumi Kudo, Takeshi Awasaki, Yukio Ishikawa, Takashi Matsuo
(Open Access)

この論文では、
1.キイロショウジョウバエで広く用いられているファージ由来組換え酵素を用いた遺伝子導入法がテナガショウジョウバエでも使えることを確認したうえで、
2.この方法に使用するための系統を多数確立して、遺伝子導入効率の高いものを選抜しました。

これにより、キイロショウジョウバエで用いられている各種の遺伝学的なツールをほぼそのままテナガショウジョウバエにも導入することが可能になりました。

ゲノム編集技術により、様々な非モデル昆虫で遺伝子改変が可能になってきています。しかし、凝ったつくりの人工遺伝子を導入しようとすると、その効率はまだまだ実用レベルに達しているとは言えません。その点、今回採用したファージ由来組換え酵素を用いた方法は高い効率と安定性を持っており、テナガショウジョウバエの研究材料としての価値を格段に高めることになると期待しています。

テナガショウジョウバエが表紙に

2018/01/03 19:35 に Takashi Matsuo が投稿

Journal of Ethology"誌の2018年のcover photoに採用されました。

オスの求愛行動の一場面なのですが、動作自体はグルーミングのようでもあります。一応”elbow rubbing"と名付けてはいますが、果たしてこれはディスプレイとしてメスに対する効果があるのか?そうだとすればグルーミングが求愛行動に転用された、つまり行動におけるco-optionの良い例となるはずですが・・・

求愛行動の発達に関する論文が公開

2017/09/25 23:55 に Takashi Matsuo が投稿   [ 2019/01/30 17:49 に更新しました ]

昆虫の行動は、成虫に羽化した時点で完成しているのでしょうか?いくつかの例で、羽化後の時間経過に伴って行動が変化することが知られています。例えば、社会性昆虫のワーカーでは日齢に応じた分業(若いうちは巣の中で働くが齢が進むと外に出る)が報告されています。

テナガショウジョウバエの求愛行動は"leg vibration"という複雑な動きを含んでいます。羽化したての若い成虫でもleg vibrationをこなせるのでしょうか、それともある程度成熟しないと行えないのでしょうか?調べてみたところ、羽化後1週間ほどたった成熟した成虫はleg vibrationを伴う丁寧な求愛を行ってから交尾を試みるのに対して、若い成虫はleg vibrationをしないでいきなり交尾しようとすることが分かりました。未熟なオスはぶしつけで正しい段取りを踏まないというわけです。

さらに、羽化後に1匹ずつ隔離していた場合と、他のオスと一緒にしていた場合で求愛行動の発達に違いがあるかを調べたところ、他のオスと一緒だった場合にはleg vibrationを控える傾向が観察されました。しかし、1週間他のオスと一緒にいても1日だけ単独飼育すると通常通りleg vibrationを行うように回復しました。他のオスの存在(社会的条件)は行動の発達に影響を与えたというよりも、ライバルの存在に応じて求愛行動を変えるオスの可塑的な戦術転換だったようです。

以上の結果は次の論文として公表されています。

Effect of social condition on behavioral development during early adult phase in Drosophila prolongata. Journal of Ethology, 36(1): 15-22. DOI:10.1007/s10164-017-0524-x

この論文が、Journal of Ethology誌の2018年度 Editor's choice paperに選ばれ、Open access権が付与されました。

脳内トランスクリプトーム解析の論文が公開

2017/02/01 19:07 に Takashi Matsuo が投稿   [ 2017/05/30 3:09 に更新しました ]

工藤さんが筆頭著者の論文がInsect Biochemistry and Molecular Biology誌に掲載されました。

Comparative analysis of the brain transcriptome in a hyper-aggressive fruit fly, Drosophila prolongata
Ayumi Kudo, Shuji Shigenobu, Koji Kadota, Masafumi Nozawa, Tomoko F. Shibata, Yukio Ishikawa, Takashi Matsuo
3月18日までオープンアクセスだそうです。

この論文では、
1.テナガショウジョウバエのオスは近縁種に比べてとても闘争性が高いこと、
2.メスの闘争性は近縁種と同程度であること、
をまず示しました。これに基づいて種間・雌雄間で比較脳内トランスクリプトーム解析を行い、
3.テナガショウジョウバエのオスだけで発現量が変化している21の遺伝子を特定しました。

これらの遺伝子は闘争性の進化に関与している可能性があると考えていますが、興味深いことにその半数以上が、キイロショウジョウバエの闘争性の異なる系統間で行われた類似の研究では見つかってこなかったものでした。種内の系統間で闘争性の変異をもたらす遺伝子と、種間で闘争性の進化をもたらす遺伝子は同じではない、ということを意味しているのでしょうか。

この研究は新学術領域「複合適応形質進化」から始まり、長い時間にわたり多くの方のご協力を得て行うことができたものです。この場をお借りしてお礼申し上げます。

高温耐性に関する論文が公開

2017/02/01 18:23 に Takashi Matsuo が投稿

等さんが筆頭著者の論文がApplied Entomology and Zoology誌に掲載されました。

Intraspecific variation in heat tolerance of Drosophila prolongata (Diptera: Drosophilidae)
Yurika Hitoshi, Yukio Ishikawa, and Takashi Matsuo

実はテナガショウジョウバエは一般的な室温(25度)では飼育することができません。発生異常を起こして死んでしまうのです。

この論文では、
1.蛹の期間が最も影響を受けやすいこと、
2.オスの方が高温に弱く、そのため性比がメスに偏ること、
3.系統間で高温耐性に違いがあること、
を明らかにしました。成虫の体がかたち作られる蛹の期間が特に高温に弱いことや、特殊な形態を持つオスの方がよりシビアに影響を受けることは、形態形成プロセスの進化と引き換えに高温耐性の低下が起こったことを意味しているのでしょうか。

メスの交尾受容性に関する論文が公開

2017/02/01 18:01 に Takashi Matsuo が投稿

等さんが筆頭著者の論文がZoological Science誌に掲載されました。

Inheritance pattern of female receptivity in Drosophila prolongata
Yurika Hitoshi, Yukio Ishikawa, Takashi Matsuo

D. prolongataのメスは交尾受容性が低く、なかなかオスを受け入れません。オスが繰り出す特徴的な求愛行動Leg vibrationは、交尾を受け入れないメスへの対抗策として進化したのではないかと考えています。そんなD. prolongataのメスの中にも、例外的に交尾受容性が高く、ほとんど何も求愛行動をしなくても交尾を受け入れてくれる系統があることが分かっていました。

この論文では、交尾受容性の異なる系統をかけあわせることにより、F1世代では交尾受容性が高い表現型が優性に現れることを明らかにしました。この表現型はメスのえり好みに関わる遺伝子の突然変異により生じたものではないか、だとすると劣性であるに違いないと予想していたので、大変意外な結果でした。原因遺伝子座を特定することでこの謎を解くことができるのではないかと期待しています。

求愛行動にまつわる「三角関係」を解析した論文が公開

2015/11/04 19:23 に Takashi Matsuo が投稿   [ 2016/03/10 21:50 に更新しました ]

瀬戸口さんが筆頭著者の論文がProceedings of the Royal Society B誌に掲載されました。

Social context-dependent modification of courtship behaviour in Drosophila prolongata
Shiori Setoguchi, Ayumi Kudo, Takuma Takanashi, Yukio Ishikawa, and Takashi Matsuo

この論文中では、オス―メス―ライバルオスの3者の相互作用について、3つのことを明らかにしました。

1.テナガショウジョウバエに特徴的な求愛行動「leg vibration」にはメスの交尾受容性を高める効果がある。
2.一方、Leg vibrationにより生じる音は周囲にいるライバルオスによるメスの横取り行動を誘発してしまう。
3.そのため、ライバルオスの存在下では、leg vibrationよりもメスに対する効果は薄いがより安全な「rubbing」という求愛行動の割合が増える。

1.については、おそらく雌雄間の対立が背景にあるのではないかと考えています。2.は典型的な信号傍受の一例で、なわばりを持てないオスが代替戦術として採用しているのかもしれません。3.はいわゆる「best of the bad jobs」的な策ですが、社会的条件に応じた求愛行動の可塑的変化として大変珍しい事例です。

なお、この論文に含まれる内容は第33回日本動物行動学会および第59回日本応用動物昆虫学会において、それぞれポスター賞をいただいています。

形態や行動の種内変異に関する論文が公開

2014/10/02 21:28 に Takashi Matsuo が投稿   [ 2015/05/11 19:36 に更新しました ]

工藤さんが筆頭著者の論文がEntomological Science誌にOnline公開掲載されました。

Variation in morphological and behavioral traits among isofemale strains of Drosophila prolongata (Diptera: Drosophilidae)
Ayumi Kudo, Hisaki Takamori, Hideaki Watabe, Yukio Ishikawa and Takashi Matsuo
Entomological Science. 18: 221–229. doi: 10.1111/ens.12116

冊子体はずいぶん先になるようですが(掲載待ち論文がほかにたくさんあるため)、Online版は以下のサイトに掲載されています。

単一メス由来系統間で成虫の各部位のサイズや闘争行動、求愛行動について比較しています。

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