妖精は近所に

まだ今のように、遺伝子の配列を読み取って種同士の類縁関係を明らかにする技術がなかった時代、樹の上に棲むシジミチョウの仲間はまとめて「ゼフィルス」と呼ばれていました。


ゼフィルスの中にはオスがメタリックな青緑色の翅を持ち、それを激しく輝かせながら梢を飛び交う種がいくつもいて、多くの人々を魅了してきました。彼らを追いかけて山林を練り歩く通称“ゼフィルス病”に、誰しも一度は(早ければ小学生のうちに)罹ると言われているほどです笑

オオミドリシジミのオス。9時~11時、高所を元気に飛び回る。

しかしゼフィルスが人気なのは、美しさだけでなく、その時間的な希少価値もあってのことでしょう。活動時間帯が限られている種が多く、どこからともなく現れてオス同士の絡み合いを見せてくれたかと思うと、2時間ほどで忽然と姿を消してしまいます。また、マクロな意味でも彼ら/彼女らを見られるタイミングは限られていて、アゲハチョウやモンシロチョウが年に複数回の世代交代を繰り返すのに対し、ゼフィルス達は年一回、初夏から梅雨明けにかけてしか発生しないのです。


そのため、普段目にしないからといって棲息していないわけではなく、都心の公園でも雑木林があるところなら、時期と時間帯を合わせることで簡単にゼフィルスに出会うことが出来ます。

アカシジミ。活発に飛び回るのは夕方だが、朝は下草に降りているところを見られる。

ウラナミアカシジミ。生態はアカシジミに似ているが、1週間程度遅れて現れる。

ミズイロオナガシジミ。「水色」と言うよりは「純白色」に見える。

朝露にまみれた翅を畳んで下草に佇むアカシジミ、昼間クリの花蜜を吸いに訪れるウラナミアカシジミ、夕刻の乱舞に向けて待機するミズイロオナガシジミ…

こんな光景が、某病の患者には正月よりもずっと強く、一年の経過を感じさせるのです。。。