精子競争と精子置換
昆虫のメスは、ひとまとまりの産卵に先立って複数のオスと交尾することがあります(polyandry)。そうすると、オスにとっては困った事態になってしまいます。というのも、卵を授精するのに自分の精子だけではなく、他のオスの精子も使われてしまうからです。つまり、メスが複数のオスと交尾すると、オスにとっては自分の子供の数が減ってしまうことになります。
このような状況下では、少しでも受精に使われる確率を上げるような性質が次々に進化してくることが知られています。まるで、メスの体内で精子同士がオスに代わってあの手この手で代理戦争をしているように見えることから、このような対立関係を精子競争と呼びます。
精子競争の手段の一つが、精子置換です。これは、後から交尾したオスが先に交尾したオスの精子を(掻き出したりすることで)自分の精子と置き換えてしまう、というもので、いろいろな昆虫で報告されています。この場合厳密には精子同士が争っている、というわけではありませんが、なぜか後から交尾したオスの子供の割合が多い、という現象があたかも精子同士が争った結果のように見えるのです。
こうなると、交尾できたからと言ってオスは全く安心することができません。いつ何時、自分の父性を他のオスに奪われてしまうかもわからないからです。そこで、様々な対抗手段が進化してくることになります・・・